Column

京都駅は京都最後の未開拓地

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京都駅は京都最後の未開拓地だと思ってる。と、最近、人にこう説明している。

京都という街に戻って3年半になるが、やはり京都は特殊条件が多い。まず土地の歴史の分だけ人間関係が複雑だ。悪いわけではないけれど、実際仕事をするにはかなり難しい土地だと思う。
そして、新しきも古きも文化の層が厚い。
帰ってきて7ヶ月間は、もう既にあらゆることがやりつくされていて、今さら私ごときが何かこの都市に対してできることあるんだろうか。とずっと思っていた。
特にここ数年は、観光バブルが激しく、本当に街の真ん中は食いつぶされている(というと言葉が悪いが)という感覚が強い。

ところが最近、みんな狙う所は同じなんだけど、狙わないところも同じだということが分かってきた。要は、色々な意味でややこしい地域はだいたいの人が狙わない。特に大資本は。

そんな京都(市内の街中)で、最後にして最大の未開拓地なのが京都駅周辺なんじゃないか、と仮説しているわけだ。
京都駅周辺、東西南北のうち北は駅の表なのでそれ以外の東西南。主要都市の駅前とは思えないほど手つかずだ。京都人は、京都駅を街の中心と思っていないうえ、各エリアの歴史も絡み、なかなか手を付けれなかった(付けようとも思ってこなかった)背景がある。ただ、外の人からするとそういう背景はあまり関係なかったり、むしろ玄関口から近かったり自由度が高かったりすることはポジティブな要素になり得る。2011年、京都駅の南に都市デザインシステムのアンテルームができた時は、正直京都の人としては引くレベルに驚いた。と同時に、ホテル+シェアハウスという構成が、外の人ターゲットのそれしかないじゃないかという解法が素晴らしく、感動すら覚えた。

京都駅東(崇仁・東九条)は、2023年に京都市立芸大、銅駝高校という京都の芸術文化を支えてきた公立の芸大、高校が移転してくる。すごく川上で決まった話だと思うが、京都の最もややこしいエリアに芸術の力(しかも公かつ教育)を持ってきた英断。世界のあらゆる都市がそうであったように、これこそその解法以外有り得なかったと思う。京都駅南(九条・十条)は、最近アーティストのスタジオや劇場が個人レベルで引っ越してきている。倉庫物件が市内には無いので、アンティーク家具屋や工房など大きい箱が必要な人たちもそもそも多い。京都駅西(しもにし)は、京都卸売市場が新しくなり新駅ができる。ここ5年位で、水族館、鉄道博物館、梅小路公園(多い広場)と、官民の大資本が入って大々的に開発が進んでいる。ちなみに東と西は、京都市のなかにプロジェクト推進室というエリアに特化した部署ができたくらい、行政としても肝入りのエリアとなっている。

他の言葉で表現しづらいけど、未開拓地という言葉が似合う。そして、京都にはこれまでもこれからも、少なくとも自分が生きている間に、未開拓地はもう出てこないんじゃないか、という予感がしている。

だから、私はこの京都駅周辺に結構身を投じてみることにした。まずは、この春から、京都駅徒歩5分の場所に事務所を構えた。出版社に誘ってもらったからなんだが、現状一番受け入れやすい京都駅北だったからというのは大きな理由の一つだ。そして現在、京都駅西にシェアアトリエを作っている。これも、芸大の移転や梅小路公園のポテンシャルと相性がいいものをと考えたあげく、クリエイターのプラットフォームにすることに至った。京都駅東でも、チームで行っているアーティストのための居住兼スタジオをミニディベロッパーのように開発していけないかと、水面下で協議している。芸大が移ってくる前に、クリエイティブな素地ができていることは、絶対街にも大学にも良いはずだから。

歴史や目に見えている事象だけでなく、未来を予測し、京都という都市の流れを詠んでいくと、
やっぱり京都駅は京都最後の未開拓地だと、信じるしかない。

*この記事は、2018年4月の記事を転送しています。

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