京都がホテルジャックに遭う日

お世話になっていた東京の会社の京都第一号のダイニングが、
いつの間にかホテルに変わっていた。
開放的な空間力がウリだったのに、まさかホテルになるなんて。

京都でも類稀なセンスの良すぎるカフェが、
閉まって残念だなと思っていたら、速攻ゲストハウスになっていた。

最近の京都は、どこもかしかも工事看板の上にはホテルの文字が躍る。
気づけば、お気に入りの場所が全て宿にジャックされている。

ご存知の通り、京都は観光都市の一途をたどっており、
実際宿が足りていない。
色んな人と話していて分かったこととして、
2020年以降も京都はそこまで観光客は減らない見込みだ。

そして不動産投資的に言うと、宿はとにかく儲かる。
たとえば、住居で貸すと家賃10万円だとしよう。
一組1万円で3組泊まれる設定として、66%稼働、半分管理費用として、
単純計算で1万円×3組×20日÷2=30万円、それでも賃貸の3倍だ。

儲かるし必要だし、だったら作ったらいいじゃないかと言われそうだが、
そんな簡単な話ではないのが本当の都市だとおもう。

仕事がら、
宿ができる物件を案内する機会がここ一年で急激に増えた。

「ロマンとソロバン」という言葉があるが、
最近、ロマンかソロバンか、どちらか一方しか持ち合わせていない極端な人が多い。
もう少し言うと、
昔は、どこかのゲストハウスで修行してお金の借り方など知らない若者が多かった。
しかし今は、投資だけが目的で、代理に見学に来させるという強者もいる。
たしかに不動産投資のなかでは宿事業は儲かる方だけど、
儲かるかだけなんだったら、FXとか違う投資をしてほしいものだと思う。
不動産投資は、あなたが痛手に合う以上に多くの人を巻き込むから。

私は、ロマンだけのひとにもソロバンだけの人にも、どちらにも物件は紹介できない。
なぜなら、物件オーナーにとっても建物にとっても、そして京都にとっても、
絶対良くない結果が待っているからだ。
ちなみに物件オーナーに対してもこのスタンスは同様だ。

一方で、私には、ロマンとそろばんを兼ね備えて宿を経営する友人も多い。
心からゲストのことを考えているし、センスもあって、
彼らのつくる空間はとても心地よい。
彼らのためには出来る限りのことは手伝いたい。
だから、ゲストハウス全般が悪みたいに言われることも遺憾だ。(京都だとたまに聞くので)

昨今の京都の宿論議、東京のシェアハウス論議によく似ている。
2008年~2013年くらい、東京では空前のシェアハウスブームだった。

ちょうどその頃、私は東京で当事者として作っている側だった。
多い時には一ヶ月に一棟、シェアハウスを作っていた。
こんなに増えても入る人いるのかなと、後半から内心思っていたが、
その心配は全く要らず、絶え間なくお客さんが来た。
今の京都の宿も、こんな状況ではないだろうか。

当時の調査報告を見ていると、
創成期はゲストハウスに近いドミトリー中心のシェアハウス、
その後豪華設備のある高所得者向けシェアハウス、
コンセプト型期は、趣味に特化したシェアハウス、
など短いスパンで流行みたいなものがあった。

今はピークは過ぎてなだらかな下降傾向。
ひつじ不動産をたまに見てみるが、
結局今も満室を維持しているのは、
コンセプト云々はあまり関係無く、
結局のところ、きちんと想いを持って作られたシェアハウスだったりする。
ウリの目新しさは数年で飽き、
長期的に見ると運営者や住んでいる人がすべてと言っていいのかもしれない。

東京から離れて客観的に見たとき浮かびあがるのは、
やはり、どれだけ建物や人と真剣に向き合うか。
それは、使い手に簡単に見破られるいうことだ。
みんな、そんなにバカじゃない。

今の京都の宿論議も、
数年経って事態が落ち着けば、
やはり考えずに作ったものは淘汰されていくし、
本当にきちんと考えられて作った宿は生き残ってくると思う。

だから、私の周りにいるような人たちは心配ない。
というか、そんな世の中になるよう私も努めないといけない。
シェアハウスがそうであったように。