和歌山の街なかに魅力的な住宅をつくる

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昨年4月から、結婚を機に、和歌山と京都の二拠点生活をする事となった。せっかく和歌山という土地と縁ができたのだから、この街で何ができるだろうか、考えることにした。

そう考えたのには理由がある。30も過ぎ自分で仕事をしていて、全く縁もない土地で暮らすことはなかなかハードルが高く、一度心身ともに倒れてしまった。その時、自分が和歌山にいたいと思える状況を作ってしまえばいいんじゃないか。つまり仕事をつくればいいんだ!ということを自分で発見したことで、自分がここで暮らす意味を見つけることができた。

東京から京都に帰った時も、仕事を通して仲間を作ることが、街に入っていく手段になった。和歌山でも、そうしていくことが一番自分の性に合っていると思ったのだ。

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まずは、これまでのプロジェクト同様、和歌山のまちで肌感覚での状況把握に徹しました。暮らしてみて真っ先に感じたことは、とにかく飲食店が多く、しかもそのレベルが高いこと。海が近く素材が良いことはもちろん挙げられるが、地元で独立する業種として真っ先にあがる職種が飲食店という事情もあるらしい。生活の三要素は「衣・食・住」というが、衣服も、市外からやってきたカッコいいストリートファッションのお店や、ヨーガンレールの服を売っている素敵ご婦人方の集まる店があり、そこそこ充実している。また、ここ5年くらいで、若い人のお店が増え始めた。満席のリノベーションカフェやセンス溢れた雑貨店、新しい教育を取り入れた英会話教室、個性的なイベントを催す本屋さん。おにぎり屋さんにサンドイッチ屋さん。皆、30~40代の同世代の事業者だ。

一方、住宅に目を向けると、なかなか住みたい住宅が無い。いざ自分達が和歌山に住もうと賃貸物件を探した時も住みたい家が無い、それなりの家賃を払いたいという家が見つからなかったというリアル経験もある。

飲食・衣服レイヤーがこれだけ育っているというのに、住宅レイヤーが育っていない。逆に言うと、食事や飲む時間、衣服やファッションを豊かにしようという人がいるということは、良質な住宅があれば住む人はいるんじゃないだろうか。というか、誰も作らなかっただけで絶対居るでしょう、少しなら。私たちだったら住むな。そう思ってしまったのです。

潜在需要はあるのだから、需要を待たずに文化を作り出すこと。それが大事だと気付いたのです。

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和歌山市は人口36万人の県庁所在地だが、一等地のオフィスビルでさえ、3階から7階がごっそり空いている。東京でいうと、丸の内が空いているようなもので、まず考えられないこと。それも、ひとつでなく何棟も。経緯としては、昔はたくさんあったであろう和歌山支社が、今では西日本支社に集約されるなどして、オフィス需要がなくなってしまったのだ。

街中の衰退を顕著に示す例として、20年程前までは4つあったデパートのうち3つが閉店したということ。昔は商店街も歩けば肩がぶつかるほど賑わっていたそうですが、今では見事なシャッター街になり住む人も減っている。他方、隣市はベッドタウンとして人口が増えていて、2,500万円の一戸建てが量産されている。

そこで、ファミリー向けの賃貸住宅を、空いている街なかのオフィスの上層階を活用してつくることにした。昨年、公立の中高一貫校が中心部にできたこともあって、住みたい人の需要が増えている。けれど、家が建つ土地もマンションも少ないという事情もあった。このプロジェクトは、周辺部の郊外に流れた住宅需要を中心部に戻すという住宅政策の側面もあります。

 

昔ながらの街というのは元々良い資源もあり、ギュッと凝縮されて暮らしやすい。町割りやお堀、老舗の店々も残っている。若い人の集う店も増えてきている。住まいだけでなく、歴史もお洒落さも街ごとひっくるめた暮らし方の提案です。住む人がいない街は死んでいくし、住まいは人をつくる基礎。住まいが思想をつくると、一貫して住宅を作ってきた身として信じています。

 

そこで、地元の有力者お二方と、和歌山のリノベーションまちづくりを牽引してきた建築家と私とで、会社を設立した。この会社では、オフィスビルの空いた空間を使って賃貸住宅を作ろうとしている。オーナーから物件を借り、内装費用を自社で投資し、ファミリーや夫婦に転貸します。まずは、1案件目として、法人の役員の自社ビルのワンフロアから取り掛かる。

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住居やオフィスとしても魅力的なところがたくさんある。オフィスを住宅に転用すると、窓が大きかったり天井が高かったり、そもそも間取りがないので自由なプランニングが可能だ。また、天井が高いことを活かして、水回りの上部に広いロフトを作り、物置きや来客用の寝室にできる。これだけでも、これまでの和歌山の住宅には無かっただろう。今計画しているものは、浴室やトイレと寝室以外は大きくワンフロアにしようとしている。ライフスタイルに応じ、たとえば子供ができたりして部屋が必要になったらその時に、部屋を区切ればいい。ライフスタイルに合わせて柔軟に住まいをつくる。きっと受け入れられる価値観ではないか。

 

家賃は、10~15万円前後で、和歌山ではやや高く、大阪では標準的な賃料に設定。どうしても欲しいワンピースなら、少し頑張ってでも買いますよね。だけど、安いからって買ったファストファッションのTシャツは買って結局後悔してしまう。そもそも、欲しくなるワンピースが売っていない街なのだ。ファストファッション的な家を量産してきたのは、我々建設・不動産業界。買い手・借り手に選択肢を与えてこなかった業界に、責務を感じている。

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ブランド名は、「タウンメイド」とした。「街なか暮らしを手作りしよう」が、メッセージ。
ギラギラCGの駅前のタワマンでもなく、郊外のポンポンつくられた戸建でもなく、古びたアパートでもなく。和歌山のような街にこれまで無かった、質感のある住まいを提案したい。それは、自分が結婚して和歌山で家を探そうと思った時に、あまりにも選択肢が無くて悲しくなったことも理由にある。

和歌山に限らず地方都市の街なかは、郊外のイオンに頼った暮らしとはまるで違う。培ってきた歴史や文化、歩いて行ける楽しい店。老若男女、多様な人が住む街は、地方であっても刺激的だ。むしろ、東京よりも、思考を停止せず、楽しく生きるエッセンスに溢れている可能性を感じている。地方都市の住宅事情を変えることは、新しいショッピングモールを建設することよりも重要な仕事だと考えています。

 

消費を使って街に人を呼び込む時代から、住まいが消費をつくる時代へ。

家だけでなく、街ごとひっくるめた、あたらしい暮らし方の提案です。